胎の乳白、線紋のクリア薄紫、斑点の濃紺が美しい、ベネチア製メディシンマン・ビーズ

本品6つは、不透明な乳白ビーズ6つで、十数年前にエチオピアの首都、アディス・アベバの中央メルカート（市場）で入手しました。
　4つは、乳白な胎に、クリアなピンク・ガラスで横と縦に数本の線紋を施し、濃紺の斑点を施した、1800年代ベネチア制作のビーズです。
　2つは、黒（黒茶）の巻き製法の胎に、風化で灰色に変色した白いガラスを胎全体に巻き製法で被せ、被せた白に、透明な薄い水色と薄い紫ガラスで斑点を施したビーズです。黒の胎に白の斑点、水色やピンクの瞳（アイの中心）を描いた、18-20Cのスカンク・ビーズ製法を変更し継承しています。
　2つの黒い胎は、穿孔面に見られるように、黒（黒茶）ガラスを巻いた制作で、スカンク・ビーズで斑点に用いた白ガラスを胎に被せ、クリアな水色やピンクのガラスで斑点を施しています。黒い灰色の白いビーズの方が、巻き線跡が残り古い制作です（9枚め）。
　乳白ビーズ4つも、制作時期が相違します。最も古いビーズは、芯の周りに不透明白ガラスの帯を上から中央へ順に太く巻き、下からの巻きに繋ぎます。また、薄い透明紫の細い線が横帯に、縦線はたっぷりと太く白とピンクが混ざった、華やかな胎です（1枚め左4つめ、以下左へ順で）。
　細い線紋が風化で薄い茶に変色した2つめは、縦線から横に伸びた3本線が胎の溝に埋められ、イスラムの引っ掻き紋に類似します(7枚め）。3つめは、艶のある乳白色の胎で、横線の輪が上下と中央にあり、横線から3本の縦線が十字形に伸びます。4つめは、最も白い乳白の細長胎に、縦と横に3本で単純な十字紋が踏襲されますが、溝は浅いため線紋の多くが剥落しています。制作の簡素化が進み手間が削減されています。
　本品は、メディスンマン・ビーズと称され、伝統的医療に携わる呪術者が身に着け、治療儀式での使用に起因します。赤や黒の胎に白い斑点のオッキオ・ビーズや赤いアレッポ・ビーズのもつ、邪視から保護や皮膚病の治療を願う、人気のビーズです。
　研究書4巻Russian Blues,-- Fancy Beadsには、他のオッキオ・ビーズと異なり類例の掲載はなく、エチオピア限定のビーズと考えられます。また、4C以降進んだ、キリスト教への改宗も、ピンクの線紋が徐々に十字紋への変容に影響したのかとも思えます。
サイズ（最小白）高さ　約9.5㍉　幅　約8.5㍉　…

商品の情報